スピードステッチャーの使い方と革ベストにワッペンを縫う



以前、ブルースカイヘブンのイベント会場で買ったカドヤのレザーベストに、ワッペンを縫うやり方を紹介しました。


【関連記事】
  「革ベストへのワッペンの縫い方」は、コチラ です。

革ベストへのワッペンの縫い方


しかしこの方法は裏生地に針跡が出ないという利点はあるものの、非常に手間が掛かるものでした。

なんとかもっと楽に縫う方法はないかと、レザーショップなどでさがしていたところ、こんな便利なものを見つけました。

その商品は「スピーディーステッチャー」です。

スピーディーステッチャー

Made in USAでもともとはアメリカの靴やカバンの職人さん達が使っていたものだそうですが、レザークラフトで革を縫ったり、厚手の生地でも簡単に縫えるというフレコミのアレです。

かなり昔からある製品ですが私は最近になって買ってみました。

今回は革ベストなどのレザーウェアにワッペンを縫い付けるのに使ってみる目的での購入です。

今までいくつかのレザークラフトの作品づくりをやってきたので、工具一式も持ってますし二本針で交互に縫うのも苦にならないというか割と好きな作業です。

でもワッペンなどを厚手の革ベストに縫うのは、以前やったことがありましたがかなり手間も掛かるし手が痛くなります。

そのためワッペン一個だけ付けたところで挫折しました。


この製品は先端の針を普通のミシン針に付け替えれば厚手でない生地でも縫う事ができるようです。


まずは「縫う」ことの基本から説明します。

手縫いの基本は「並縫い」ですね。

運針(針の動かし方)は、一定の間隔で生地の表と裏からそれぞれ刺して縫っていきますので、生地の表と裏が同じ幅の針目で縫うやり方です。

針だけを前後に動かして生地をたぐって縫っていくと並縫いと同じ縫い目になりますが、こちらは「ぐし縫い」と言われています。


これに対してミシンで「直線縫い」をする時は、上糸と下糸の二本を使ってさきほどの並縫いを上下交互にそれぞれの糸で縫って行くので、針目が連続しています。

同様に、レザークラフトで二本針で縫って行くのもこのミシン掛けの直線縫いと同じように二本の針と糸が前後に交互に縫い進めていきますので縫い目が連続しています。


この「スピーディーステッチャー」は、一本の針と一本の糸で上記のミシンやレザークラフトの二本針と同じように上下連続した縫い目で縫えるので力の掛かるバッグなどにも丈夫に縫う事が出来ます。

しかも手によく馴染むサイズ・形の木製グリップによって、手縫いほど手が痛くなることもありません。

さらなるメリットとして、ミシンの場合だと平らに伸ばした生地をミシンの台にセット出来るところしか縫えませんし、レザークラフトの二本針縫いだと、両手で針を持って縫うので材料のレザーはレーシングポニー(あるいは足)ではさんで固定しておく必要がありますが、この「スピーディーステッチャー」はその点でも縫う場所ややり方に自由度があります。


製品についてみてみます。

この「スピーディーステッチャー」は同じ形状の製品で、パッケージや日本語の説明書の有無など何種類かあるようです。

売られている価格も2,000円程度から3,000円程度と幅があります。

本体は、太めの木製グリップの底の部分の金属の蓋を外すと中に、ミシンでいうところの下糸用のような金属製のボビンが入っていて、購入時点でここにすでに糸が巻かれています。

スピーディーステッチャー

スピーディーステッチャー

スピーディーステッチャー

別の色や太さの糸を使いたい時には自分で手で巻く必要があります。

最近は、同じようにして縫うもので細身の金属製でピンバイスみたいな形の「イージーステッチャー 」なるものもあるようですが、厚手の革や生地を縫うには太い木製グリップの「スピーディーステッチャー」の方が使いやすそうです。


ボビンに巻かれた糸はグリップの途中に開けられた穴から外に出てピンのようなところに一重だけ巻かれています。

スピーディーステッチャー

この「一重巻き」がとても重要なところで、これによって糸に適度なテンションを掛けています。

またこの巻き方にも決まりがあって、上の写真のように「針に行く方の糸が下になる」ように巻かないと針の先から糸を引き出しにくくなると書いてありましたが、そんなには違わないような気がしました。


グリップの先にはピンバイスやハンドドリルと同様の構造で針を刺して固定するようになっています。

製品にはあらかじめレザーや厚物縫いようの針が二本ついています。

針を先端に取り付け、糸を針穴に通して先端キャップから外に引き出しておきます。

使わない時はこの先端のキャップの中に針二本や糸の先をしまっておけるのも便利です。

以上で縫うための準備が完了します。


実際の縫い方です。

私の買った製品には、イラストともの日本語版の説明書が付属していました。

いきなり縫い始めてもいいのですが、縫い目を均等の幅にするにはあらかじめレザーや生地などに印を付けておけば揃ったきれいな縫い目が出来ます。

均等の幅で印をつけていくには裁縫専用のものもあるのでしょうけど、私はデザイン用品の破線定規をつかったり、ギアをこんな風に加工して革に印をつけています。

レザークラフトとしてやるのならあらかじめ専用の菱目打ちで開けておいた方が仕上がりは全然違ってきますが、それではせっかく「簡単に」縫うと言う意味ではどうかなと思います。

また縫い目がほつれてしまったバッグや靴などの革製品を補修するのなら、すでに開いている針目を利用すればいいですね。


針の先に引き出しておく糸の長さは、縫うものの厚さによって違ってきますが縫う長さの2.5倍+10cm程度は必要です。

これは糸が上下に出る部分(2倍)と表裏に移動する部分(0.5倍)に最後に処理する部分(10cm)からです。

それでは縫い始めます。

最初に一針、縫い始めの位置に針を刺します。

裏側に針が出たところで、先端の糸を全部裏側に引き出しておきます。

針を抜きます。

次の縫い目の位置に針を刺します。

そして少しだけ(1cm程度)針を戻します。

そうすると裏側に刺した針のところの糸にたるみが出来て輪になります。

この輪の中に前に刺してあった場所から出ている裏側の糸をくぐらせます。

前後の糸を均等の力で引いて縫い目を作ります。

この時、ミシンの上糸・下糸の糸調子を合わせるのと同じく、表と裏の糸の交差部分が縫い目の革や生地の中に収まるようにするのがキレイに仕上げるコツです。

縫い目ごとに表裏バラバラに交差部分が出てしまうと不揃いになってしまいます。

そしてもう一目、次の縫い目に針を刺し、少し戻して裏糸をたるませ輪を作り、その中に再び糸を通して引き締めます。

これを繰り返してきます。

言葉にするとわかりくいので、動画にしてアップしました。




実際にやってみると誰でもすぐにわかると思います。

太い木製グリップのおかげで厚いレザーに針を刺すのもそれほど力もいらず手も痛くなりません。


縫い終わりは裏側に針を刺した状態で糸を10cmほど引き出してカットします。

そして前の縫い目から出ているもう一方の糸と結んで処理します。

これで完成です。


このスピーディーステッチャーはこういったワッペンの縫い付けとか、革製品やナイロンベルトなどの補修とかにはいいでしょうけど、これだけでレザークラフトの作品を仕上げるのは私には難しそうです。

理由は、縫い目がきれいに揃わないからです。

やはり革小物などを作るなら、菱目打ちで均等にガイド穴を開けて二本針で縫った方が、はるかにキレイでしかも早くできあがると思います。


それでは実際に、バイク用の革ベストにワッペンを縫い付けてみます。

一番上の写真にあるように、以前はあらかじめ千枚通しで革に穴を開けておき、そこにレザークラフト用の針でかがっていくという非常に手間の掛かるものでした。

今回はこのスピーディーステッチャーでざっくざっくと縫って行きます。

キレイに仕上げる為には、裏地の一部を切って、中に手を入れながら縫えば裏地に縫い跡が出ずに仕上がるのですが、裏地の処理と暗い生地内での作業が難しそうですし、裏地ですから直接見えないので今回は裏地ごと縫ってしまいます。


縫う前の準備として糸を用意します。

最初の方にも書いたように、製品にあらかじめ付属しているボビンにはすでに糸が巻かれていますが、ワッペンの黒に合わせて黒い糸を使います。

付属のボビンはそのままにして、家庭用ミシンの下糸ボビンを加工して使います。

プラボビン二つのそれぞれ片側の羽根の部分をニッパーでカットして切り口を揃えておきます。

スピーディーステッチャー

その二つをビニールテープでつなげばできあがりです。

スピーディーステッチャー

これにレザークラフト用の黒いスヌーズ糸を巻くのですが、長く巻きたい時は家庭用ミシンの下糸巻き機構を使ってやれば簡単に出来ます。

今回はそれほど長くは必要ないので手で巻きました。

糸の長さはワッペンの外周を2.5周してさらに両端に10cmずつ余るくらいのものにしました。

スピーディーステッチャー

本体から糸を引き出し、ボビンを収めます。

テンションを掛けるために釘に巻く回数は、付属の糸より細いのとすべりがいいので多く巻いておきます。

スピーディーステッチャー

ワッペンを貼る位置を決めます。

このカドヤの革ベストは革が非常に厚く、裏側にも多くの革が回っているので出来るだけ重ならないところで縫いたいのですが、うまい場所が見つからずデザイン優先で決めました。

スピーディーステッチャー

縫う時に位置を固定するために、ワッペン裏に両面テープを貼って仮留めします。

スピーディーステッチャー

いよいよ縫い始めます。

注意するのはワッペンと革ベストに垂直に針を刺す事です。

ワッペンの外周から2、3mm内側に針を刺します。

スピーディーステッチャー

一針目刺さったら、少し針を戻すと先端にたるみが出来ます(赤い丸)。

スピーディーステッチャー

これを引いて裏側に糸を出しておきます。

糸の長さは「ワッペン外周の1.5倍+10cmくらい」です。

二針目刺したら同じく少し針を引いて出来た輪「青い部分」の中にさきほど裏側に出しておいた糸を通します「赤い矢印」

スピーディーステッチャー

糸が通ったら針を引いて抜き、裏の糸とステッチャーから出ている糸の両方を引いて締めておきます。

この時、表と裏のどちらかだけを強く引きすぎると縫い目の交差点が出てしまいますので均等の力にして、縫った交差点が革ベストの厚みの中に収まるようにするとキレイに出来ます。

これだけは慣れの問題です。

縫い目は細かい方がキレイで丈夫なので5mmくらいの間隔で縫っていきましたが、だんだん疲れてきて後半は7mmくらいに広がっていました。

これを繰り返していきます。

スピーディーステッチャー

革ベストの裏がの縫い跡はこんな感じです。

スピーディーステッチャー

革は固いですが、本体の木製グリップが太く握りやすく力が入れやすいのと針も刺さりやすいのでそれほど力を入れなくても縫えますが、気を付けないと針を手に刺してしまいます。

 ※ ↓ 経験者談

スピーディーステッチャー

私はなぜか糸の長さを間違えてしまったようで、途中で足りなくなりました。

その時は一旦ここで終了して、裏側に二本の糸を出してカットし、結んだ上でライターで炙って固着させておきます。

スピーディーステッチャー

その後は同じ場所から続けて行けば問題ありません。

全部縫い終わったら先ほどと同じく裏側に二本糸を出してカット、固結び二回、2mm残してカット、ライターで炙って仕上げます。

スピーディーステッチャー

垂直に針を刺していたつもりですがやはり曲がっていたようで裏地がつってしまっていますが、許容範囲としましょう。

これで完成しました。

スピーディーステッチャー

心なしか左下がりのように見えるかもしれませんが、目の錯覚です「キッパリ!」笑;


初めての作業で慣れなかった事や写真を撮りながらだったのでこのワッペン1個縫うだけで20分強も掛かってしまいました。

たぶん慣れてくれば10分ちょっとで出来るかもしれません。

仕上がり的には前回縫った右の方が断然キレイですが、作業の楽さではスピーディーステッチャーの方が上です。

本当はまだまだ縫いたいワッペンはこれだけありますが、完成するのはずっと先の事でしょうね。

スピーディーステッチャー

出来ればカドヤさんで革ベストを買った時にワッペンを持って行けば(料金はわかりませんが)縫ってもらえるらしいのですが、後から買ったワッペンとかを自分で自由な場所に縫えるのは、このスピーディーステッチャーの大きな特徴ですね。

 ※ レザークラフトをやるなら手縫いセットとレーシングポニーは必需品です。